転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


3 何事も反復練習が大事です



「ルディーンのおかげで、指先の荒れが治って助かるわ」

「俺も剣の練習で潰れたマメの痛みをとってくれるおかげで助かるよ。偉いぞ、ルディーン」

「えへへっ」

 ヒルダ姉ちゃんとディック兄ちゃんに褒められて、僕は得意満面だ。

 魔法の練習を日課にし始めたとは言え、毎日怪我をする訳にはいかない。
 だって痛いの、やだもん。
 と言うわけで僕は自分の怪我ではなく、家族の怪我や肌荒れを日常的に回復することによってキュアの練習をしていた。



 僕の家族構成は両親と姉、兄、兄、姉、姉、僕の6人兄弟で、僕はその末っ子。

 お父さんの名前はハンスでお母さんの名前はシーラ、二人ともジョブ持ちで、お父さんは13レベルの戦士を、お母さんは11レベルの狩人をそれぞれ習得しているんだ。

 と言うのも僕の住んでいるのはアトルナジア帝国と言う国にあるグランリルという村なんだけど、そこの住人は魔物が住む森が近くにあると言う土地柄、誰もがなにかしらの身を守るすべを身につけているんだ。
 それでこの村の住人は男性は剣と楯を持って前に出る人が多く、女性は後ろから弓を射ると言う人がが多い傾向にあるんだけど、うちの両親は特に奇抜なことを好む性格をしているわけではないから、ごく普通に剣や弓の練習をしているうちにこのジョブを手に入れたんだと思う。

 次に兄弟たちだけど、名前は上からヒルダ、ディック、テオドル、レーア、キャリーナで、歳は15歳、13歳、12歳、9歳、7歳だ。

 このうちキャリーナ姉ちゃん以外は武器の練習を始めているんだけど、ジョブを持っているのはヒルダ姉ちゃんだけ。
 ディック兄ちゃんとテオドル兄ちゃんは一般職として見習い剣士を身につけているけど、まだジョブを持つにいたっていないのは、経験値がジョブとしての戦士を得るまでには達していないからなんだと思うんだ。
 レーア姉ちゃんは一般職もまだ何もついていないから、これもまだそこまでの域に達していないと言う事なんだろうけど、村にいるほかの9歳くらいの子供たちも一般ジョブを持っていないから、他の人から極端に遅れていると言う訳ではないと思うよ。

 因みにヒルダ姉ちゃんのジョブはなんと6レベルの戦士だったりする。
 その上サブジョブまで持っていてそちらは2レベルの狩人だ。

 この村ではサブジョブまで持っている人は数人しかいないのに、15歳で二つのジョブを持っているヒルダ姉ちゃんは多分天才なんじゃないかなぁって僕は思ってる。
 おまけに弟の僕から見ても美人さんだから、きっと凄い旦那さんを見つけて将来は幸せになるんじゃないかな。
 いや、もしかしたら町へ出て冒険者になったりするのかな? そうだったらちょっと寂しいなぁ。

 さて、実は僕が練習している魔法はキュアだけじゃないんだ。
 朝起きた時と夕方、そして夜寝る前の3回、MPが尽きるまでライトの練習をしている。
 これは僕のステータスが信仰より知力の方が高いからどちらかと言うと神官より魔法使いの方が向いているんじゃないかと思ったからだ。
 それならば治癒魔法ばかりではなく、魔法使いが使う魔法も練習した方が絶対いいよね。

 ……別に攻撃魔法の方が治癒魔法よりかっこいいから魔法使いになりたいわけじゃないぞ、ホントだぞ。

 因みにライトの魔法だけど、ちゃんと発動はする。
 発動はするんだけど、しょぼいんだよなぁ、これが。

 僕は毎回指先にかけるんだけど、発動したライトの光は小さなろうそくの光よりちょっと暗い程度だから普通のろうそく位の明るさにしようと思うと片手の指、5本全部にかけないといけないんだ。
 その上劣化してるのはそれだけじゃなくて持続時間も少し短く、本来なら1時間くらいついているはずなのに20分もすると消えてしまうんだよね。
 それなのに使うMPは普通と同じ3ポイントなんだから嫌になっちゃう。

 でもこれだっていつかは明るさも持続時間も延びると信じて毎日繰り返してるんだ。
 継続は力、信じる者は救われる、あっこれはちょっと違うか。
 まぁ続けていれば何か変わるかもしれないけど、やらなければ何も変わらないんだから続けるべきだよね。
 努力は時に自分を裏切るけど、努力しないで成功する人もまた居ない、とも言うやつだ。

 後、魔法の上達に関してはもう一つやっている事がある。
 意外に思えるかもしれないけど、それはお勉強だ。

 ドラゴン&マジックオンラインでは知力と精神力が高ければ攻撃魔力が上がり、信仰と精神力が高ければ治癒魔力が上がった。
 この内、信仰と精神はどうやって鍛えるのか解らないけど知力は上げ方の想像がつく。
 勉強をすれば知力は上がるはずなんだ。

 幸いグランリルの村は近くにある都市、イーノックカウへ魔物の素材を売りに行くからか簡単な計算ができる人が多く、識字率も高いから勉強をしようと思えば先生には事欠かない。
 おまけに素材売買ができる分だけ近隣の村よりも裕福だから、村の集会所にある図書館には普通の村にはない母国語であるアトルナジア帝国語で書かれた本や外国の言葉を覚えるための教材まであるから、一人で勉強するにしてもその為の資料には事欠かないんだ。



 流石に外国の言葉までは手が回らないものの、僕は勉強を始めてたった数週間で母国語であるアトルナジア帝国語だけは少しずつ読めるようになっていた。
 と言うのも、帝国語ってローマ字と同じ様に母音と子音にあたる文字が組み合わさってできてるから、アルファベットを覚えるように決まった数の文字さえ覚えてしまえばある程度は読めるようになるんだよね。

 そして文字を覚えてしまうと今度は図書館に幾つかある冒険者のお話とか昔の英雄のお話が書かれた本を読むことができるようになり、ファンタジー系のゲームやラノベが好きだった僕は次第にその物語たちに夢中になっていったんだ。
 すると当然図書館に入り浸るようになり。

「ルディーン君は小さいのに偉いねぇ。もう本が読めるようになったのかい?」

「うん! ぼく、ぼうけんのおはなしをよむのがだいすきなんだ」

 あまりによく図書館に顔を出すものだから、管理をしている司書さんとはすっかり顔なじみになったんだ。
 そのおかげで彼は僕が好きそうな本を町に行く度に仕入れてはどんどん紹介してくれるもんだから、短期間でかなりの数の本を僕は読破して行く事になる。

 すると面白いもので、読んでいるうちに自然と文字になれてきて今度は書く事もできるようになってしまったんだよね。
 だから僕は4歳児なのにもう母国語の読み書きができるようになった、天才少年みたいに周りからは思われてるみたいなんだ。

 実際は生前の知識でローマ字を知っていたから習得が早かっただけで、特別頭がいいわけではないんだけどね。

 あと同様に過去の記憶があるおかげで計算技術も4歳児にしてはありえないほど高いんだけど、これに関しては周りに隠している。
 だって習ってもいない計算が、四則計算どころか因数分解などの高等数学までできるなんて事がばれたら流石におかしいと思われるからね。
 実際問題、町ではなく村で生まれた僕としては四則計算ができればそれで十分なんだからそれ以上の計算知識があっても意味はないんだし、この秘密は生涯外に洩らすことはないだろう。
 将来、商会の子と結婚でもしたら話は別だろうけどね。

 いや魔法があるおかげで科学の発展はあまり進まないだろうから、たとえどんな状況になっても四則計算以上は使わないかも。
 なんて事だ、また一つチートになりそうな僕の取り得が、自分の考えによってつぶされてしまった。
 ほんと、何故転生したのに僕にはチート能力がないんだろう? 普通はあるよね。

 神様、もしかして付けるの忘れてたとか? なら今からでも構いません、何か下さい!

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